土地や農地の活用方法を考えている方の中には、太陽光発電事業者への売却を考えている方も多いのではないでしょうか。太陽光発電事業者へ売却する場合、契約内容のすれ違いや引き渡しに関するトラブルが発生する事例もあるため慎重に検討しましょう。
この記事では、太陽光発電の土地売却で起こりうるトラブルや対処法について詳しく解説します。
事例:景観や土地価格の影響によるトラブル
Aさんは、使い道のなかった土地を太陽光発電事業者に売却しました。しかし、売却後に設置場所の周辺住民から「景観が悪化した」「自然が壊された」といった苦情が相次ぐ事態になってしまいます。
もともと自然豊かな景観を売りにしていた地域だったため、ソーラーパネルの反射光や、大規模なパネル配置が環境にそぐわないとして住民からの反発が高まる結果になったのです。
土地を手放したAさん自身には、直接的な責任はありません。しかし、「なぜこの土地を売却したのか」と住民から非難を受け、地域コミュニティの中で過ごしづらくなってしまいました。
Aさんは、どうすればトラブルを回避できたのでしょうか?
回答:事前に業者と契約書で「景観や防音対策」を明確にする
太陽光発電設備の建設では、地域の景観や住民への配慮が重要です。事前に太陽光発電事業者と契約書で「景観や防音対策」を明確にし、パネルの高さや角度の調整、フェンスなどの設置を行い、地域環境と調和した設計にするように取り決めておきましょう。また、パネルの反射光が近隣に影響しないよう「反射防止パネル」や「設置角度調整」を盛り込むことも重要です。
地域への影響については、自治体へ事前に相談し、景観保護に関する条例やアドバイスを受けることで、トラブルが発生するリスクを抑えられます。他にも、住民の理解を深めるために、太陽光発電事業者に対し「事前説明会の実施」を契約条件に加えるのも効果的です。地元の方々と信頼関係を築くことでトラブルを未然に防ぎやすくなるでしょう。
太陽光発電の土地売却で起こりやすいトラブル
太陽光発電設備は、日当たりの良い場所であれば設置できます。そのため、不動産会社に売りにくい土地も、太陽光発電事業者が買い取ってくれることもあります。
しかし、太陽光発電事業者に土地売却をする際には、売買契約から引き渡しまで時間がかかる点などには注意しましょう。ここでは、太陽光発電の土地売却で起こりやすいトラブルについて解説します。
売買契約を結んでも売却できないケースがある
太陽光発電事業者との土地売買では「停止条件付売買」という契約形態が一般的です。この契約は、将来特定の条件が満たされた場合にのみ、売買契約が有効になる契約方法です。
例えば、売買契約にあたって「事業に必要な行政の許可が下りたら売買契約が有効になる」という条件が付いている場合、許可が得られない限り土地の売却は完了しません。このようなケースでは、売却が成立するかどうかが不確定なため、売却後の資金計画が思ったように進められず、困惑することがあります。
売買契約が進まない事態にならないためにも、売却前に契約書の詳細を確認し、条件の内容やリスクについて事前に把握しておくことが重要です。
契約から引き渡しまで時間がかかる
太陽光発電用地としての売却は、通常の不動産取引よりも引き渡しまでに時間がかかります。これは、太陽光発電事業者が土地の環境調査や日射量調査などを慎重に行う必要があるからです。場合によっては、引き渡しまで1年以上かかることもあります。
また、太陽光発電の目的で土地を使用する場合「地目の転用申請」や「開発許可」「電力会社への申請」などの手続きが追加で必要になります。そうした申請手続きには、太陽光発電事業者と売買契約を結んだ証明も必要です。売買契約を結んだあとにも複数の手続きを終えなければいけないことも、引渡しまで時間がかかる理由のひとつです。
ソーラーパネル設置で近隣トラブル
太陽光発電事業者に土地を売却する際には、ソーラーパネル設置後の近隣トラブルが起こる場合もあります。
例えば、ソーラーパネルの反射光や設置設置が原因で、地域の景観が損なわれたと感じる住民から苦情が出るケースがあります。こうした環境の変化による不満が、近隣トラブルへと発展する場合もあり、元の地主にも何らかの影響が及ぶケースも少なくありません。
そのため、土地を売却する前に、売却先の事業者に対して住民説明会を開催するよう働きかけ、地域住民の不安を解消する機会を設ける対策も重要です。
太陽光発電業者に急かされ、相場より安く売却してしまう
太陽光発電用地として土地を売却する際、早期の決断を求められるケースがあります。太陽光発電事業者も計画通りに進めたいと考えているため、できるだけ早く土地を確保したい事情もあるでしょう。
ただし、決断を急ぐあまり、十分な比較検討を行わずに売却を決めてしまうと、結果として相場よりも安い価格で売却してしまう可能性があります。特に、一社の査定額だけで契約を決めてしまうと、他社と比較できずに安い価格で売却することになりかねません。
こうした事態を防ぐためには、複数の業者に査定を依頼して価格を比較し、適正価格を把握することが重要です。
太陽光発電事業者への土地売却する際の注意点
納得のいく価格で太陽光発電事業者へ土地を売却したい方は、信用できる会社か見極め、売買契約の内容をしっかり確認してから売却を決めましょう。ここでは、太陽光発電事業者への土地売却する際の注意点について解説します。
農地転用ができるか確認する
田や畑などの農地は、そのままでは太陽光発電用地として利用できません。農地を太陽光発電用地として売却するには、農地転用という手続きを行い、都道府県知事から許可を得る必要があります。農地転用が難しい場合には、売却が成立しないこともあるため注意が必要です。
太陽光発電事業者へ売却する際は、問い合わせる前に、まず法務局で土地の地目を確認し、必要に応じて地方農政局や自治体に転用が可能か相談しましょう。
売買契約の内容を確認する
太陽光発電用地として土地を売却する際は、売買契約書の内容をしっかりと確認しましょう。これは、悪質な太陽光発電事業者によって買取価格が変更されることや、契約条件が曖昧になっていることでトラブルに発展するケースを避けるためです。
例えば、必要な行政の許可が下りたら売買契約が有効になるなどの曖昧な条件が付いている場合は、売却が成立しない可能性もあるため注意が必要です。また、買取価格が変更可能という条件は、契約後に価格を下げられる可能性があるため、買取価格が明記されているかも確認しましょう。
太陽光発電事業者の対応を見て、信頼できるか判断する
太陽光発電用地として土地を売却する際には、取引を行う太陽光発電事業者が信頼できるか見極めることが重要です。
一般的に、信頼できる太陽光発電事業者は、土地所有者からの依頼や問い合わせに対して、迅速で的確な対応を行います。不明点や疑問についても丁寧に説明し、納得できる回答を提供してくれるでしょう。
一方で、太陽光発電事業者から十分な情報提供がない場合や、不明点や疑問点に関する相談への回答が曖昧な場合は注意が必要です。土地売却は、高額な取引となるため、複数の太陽光発電事業者の対応をみて慎重に選択しましょう。
太陽光発電事業者に売却する際の流れ
太陽光発電事業者に売却する際の流れは、大きく6つに分かれます。売却の流れを把握しておくことで、混乱せずスムーズに取引ができるでしょう。ここでは、太陽光発電事業者に売却する際の流れについて解説します。
1.太陽光発電事業者に査定依頼をする
複数の太陽光発電事業者に査定を依頼します。太陽光発電事業者によって買取価格や条件が異なるため、複数の査定を受けて比較することが重要です。
査定依頼時には、土地の場所や面積、現在の利用状況(日当たり、地目など)を正確に伝えます。この段階で見積もり価格が提示されることもありますが、現地調査を経て最終的な価格が提示される場合も多いでしょう。
2.現地査定後に買取価格が提示される
査定依頼を受けた太陽光発電事業者は、現地調査を行います。現地調査では、太陽光発電に適した十分な日当たりが確保できる日照条件や土地利用制限の確認など、さまざまな条件から土地を評価します。多くの条件を基に、太陽光発電事業者から正式な買取価格が提示されます。
3.売却先の太陽光発電事業者を決める
太陽光発電事業者から提示された買取価格や条件を比較し、自分に合った太陽光発電事業者を選択します。この際、価格だけでなく契約形態や太陽光発電事業者の信頼性なども重視しましょう。
4.売買契約を締結する
太陽光発電事業者を選んだら、売買契約を締結し、手付金を支払います。ただし、この段階で土地の引き渡しや代金の支払いが完了するわけではありません。
太陽光発電事業用地の取引では、契約時に「停止条件」をつけるのが一般的です。そのため、特定の条件が満たされた場合にのみ、売買契約が有効になります。そのため、契約書の内容を慎重に確認しましょう。
5.太陽光発電事業者が事業申請して許可を受ける
売買契約後、太陽光発電事業者は各種申請手続きを進めます。この手続きは、地目の変更申請や電力会社への接続申請など、複数の手続きが必要です。そのため、手続きが終わるまでに数ヶ月から数年かかる場合もあります。
手続きが確実に進んでいるのかチェックするためにも、こまめに進捗状況を確認しましょう。
6.決済と土地の引き渡し
最後に、太陽光発電事業者から代金が支払われ、土地の引き渡し完了です。決済時には手付金を差し引いた金額が支払われ、同時に土地の所有権移転登記が行われます。引き渡し時には、契約内容と実際の手続きが一致しているかを再確認し、不備がないか確認しましょう。
太陽光発電に土地を売却する前に不動産会社に相談をしよう
土地の状況によっては、太陽光発電用地として太陽光発電事業者に売却する方法も有効です。なぜなら、通常の不動産市場では売りにくい物件も、太陽光発電用地として買い取ってもらえる可能性があるからです。
しかし、景観条例や環境保護規制などの制約が影響することがあり、場合によっては近隣住民とのトラブルが発生することもあります。こうしたトラブルを避けるためにも、契約内容を確認して、慎重に売却しましょう。
また、売却手続きには時間がかかることが多いため、売却までの流れを理解した上で手続きを進めることも大切です。
初めて土地を売却する方にとっては、自分の土地が太陽光発電に適しているか判断が難しいこともあります。そのため、売却で悩んでいる際には、土地売却に強い不動産会社に相談することをおすすめします。
不動産会社に相談することで、実績や経験を基に、土地の特性や規制も踏まえて売却プランの提案やアドバイスをもらえることもあるからです。プロの意見やアドバイスを参考にすることで、土地に合った売却ができ、満足のいく取引につながるでしょう。
有限会社住販は「売却に強い不動産」です。 売却に関するお悩みやこれから売却を考えている方は、ぜひ一度ご相談ください。